腫瘍マーカー
どんな検査?
腫瘍マーカー(しゅようマーカー)とは、がん(腫瘍)の存在や進行度を示す生体標識物質のことを指します。これらのマーカーは、がん細胞が体内で産生・放出する特定の物質や分子であり、血液、尿、組織サンプルなどで測定されることが一般的です。腫瘍マーカー検査は、がんの診断の補助や、診断後の経過や治療の効果をみることを目的に行います。
何がわかるの?
腫瘍マーカーの主な役割は、以下の点です。
■がんの診断とスクリーニング:腫瘍マーカーの検査は、特定のがんの存在を疑う場合や、定期的なスクリーニングの一部として行われることがあります。ただし、腫瘍マーカーの単独の測定では、確定診断には不十分な場合があります。他の検査や画像検査と組み合わせて使用されることが多いです。
■がんの進行度と治療効果の評価:がん治療中に腫瘍マーカーの変化を監視することで、がんの進行度や治療効果を評価することができます。治療が効果的であれば、マーカーの値が低下することが期待されます。
がんの種類 |
検査方法 |
甲状腺がん | CEA |
非小細胞肺がん | CYFRA21-1、CEA、SLX、CA125、SCC |
小細胞肺がん | NSE、ProGRP |
食道がん | SCC、CEA |
胃がん | CEA、CA19-9、CA72-4 |
大腸がん | CEA、CA19-9、p53抗体 |
肝臓がん |
FP、PIVKA-Ⅱ、AFP-L3 |
胆道がん | CA19-9、CEA |
膵臓がん | CA19-9、Span-1、DUPAN-2、CEA、CA50 |
膀胱がん | NMP22、BTA |
前立腺がん | PSA |
乳がん | CEA、CA15-3、CA27-29 |
子宮頸がん | SCC、CA125、CEA |
卵巣がん | CA125、CA72-4 |
検査の方法・注意事項
その他
特徴・基準値
名称 | 特長 | 基準値 |
AFP | 臓器特異性の高い腫瘍マーカーで、肝がん、卵巣や精巣の胚細胞がんで高値になります。 まれにAFPが高くなる胃がんもあります。慢性肝炎や肝硬変、妊娠などでも値が上昇します。 |
10.0ng/ml以下 |
CA15-3 | 乳がんに特異性が比較的高く、主に乳がんの治療効果の判定や経過観察に用いられています。 | 25.0U/ml以下 |
CA19-9 | 膵臓がんをはじめ、胆道、胃、大腸のがんなど、主に消化器のがんで高値になります。 | 37.0U/ml以下 |
CA125 | 卵巣がんで高値になりやすく、その他子宮体がんや、膵臓、胃、大腸などのがんで高値になることがあります。 子宮内膜症、月経、妊娠、肝硬変、膵炎などでも上昇します。 |
35.0U/ml以下 |
CEA | 大腸がんなどの消化器のがんをはじめ、肺、卵巣、乳がんなどで高値になります。 喫煙や炎症性疾患、肝硬変、糖尿病で高値になることもあります。 |
5.0ng/ml以下 |
CYFRA | 扁平上皮がんで高値になり、主に肺の扁平上皮がんや頭頚部腫瘍の経過観察に用いられます。 | 3.5ng/ml以下 |
NSE | 神経組織や神経内分泌細胞に特異的に存在する物質で、肺の小細胞がんや神経芽細胞腫などで高値になります。 | 10.0ng/ml以下 |
PIVKA-Ⅱ | 臓器特異性の高い腫瘍マーカーで、肝臓がんで高値になります。肝臓がんの発見や経過観察にAFPと併用されます。 |
40.0mAU/ml以下 |
ProGRP | 肺の小細胞がんで高値になりやすく、治療効果の判定や経過観察などに用いられます。 |
46.0pg/mⅼ未満 |
PSA | 前立腺に特異性の高い腫瘍マーカーで、がんの発見や経過観察に重要な役割を果たしています。 前立腺炎や前立腺肥大で上昇することもあります。 |
4.0ng/ml未満 |
SCC | 主に、肺や食道、子宮頚部の扁平上皮がんで高値になります。皮膚の病気で増加することもあります。 | 1.5mg/ml以下 |
SLX | 肺がんなどで高値になります。偽陽性が少ないとされています。 | 38.0U/ml以下 |
I-CTP | 骨の成分が分解されるときに放出される物質で、主に転移性骨腫瘍(がんの骨転移)を調べるために用いられます。 | 4.5ng/ml未満 |
腫瘍マーカーはがんの診断や治療の一部として役立つが、完全な確定診断には他の検査との併用が必要であり、特定のマーカーが異常だからといって必ずがんであるとは限りません。
医師との相談を通じて、適切な検査や診断プロセスが行われるようにしましょう。