良性脳腫瘍
概要
良性脳腫瘍とは頭の中から発生する腫瘍のうち、成長の速度が緩やかで、周りの脳や正常組織との境界がはっきりしていて、他の部位に転移することがないものを指します。発生頻度が高いものには、脳を覆う髄膜の細胞から発生すると考えられる髄膜腫(ずいまくしゅ)、体の中のホルモンを調節する脳下垂体から発生する下垂体腺腫(かすいたいせんしゅ)、脳神経を覆う神経鞘から発生する神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)があります(図1)。神経鞘腫の中で頻度が高いのは、聴神経から発生する聴神経鞘腫です。
原因・症状
腫瘍が大きくなればすべての脳腫瘍で、頭痛や嘔吐が認められるようになります。その他の症状は発生した部位や腫瘍の種類によって異なります。例えば、髄膜腫であれば発生部位の脳が圧迫されることで運動麻痺、感覚障害、失語、視野障害などが出現します。また脳が刺激されて、けいれん発作が出現することもあります。下垂体腺腫であれば、脳下垂体近くを走行する視神経の圧迫により視力や視野の障害が出現したり、脳下垂体が調節するホルモンの異常から、月経異常や乳汁分泌、身長や顔貌の異常などが出現します。神経鞘腫のうち聴神経腫瘍では難聴、耳鳴り、めまい、ふらつきなどが出現します。
検査
CT検査やMRI検査などの画像検査が最も重要です。造影剤を使った検査が必要になることもあります。下垂体腺腫では血液検査でプロラクチンや成長ホルモンなどのホルモンが異常を示すことがありますが、その他の良性脳腫瘍は血液検査で特異的な異常を示すことはありません。
治療
良性腫瘍でも頭の中の腫瘍が増大すれば、上記のような症状が出現し、命に関わることもあります。必要に応じて治療を行うことになります。多くの良性腫瘍の治療は手術(腫瘍を摘出する開頭術など)が中心です。ただし下垂体腺腫では薬物療法が選択されることがあり、摘出が難しい頭蓋底部の腫瘍や再発の可能性が高い腫瘍は放射線治療を行うことがあります。