骨盤臓器脱
概要
骨盤臓器脱は、女性の骨盤内にある臓器である膀胱、子宮、直腸などが腟壁とともに脱出してくる病気です。出産、加齢、重い物の持ち上げ、便秘などで慢性的に腹圧をかけることなどで骨盤を支える骨盤底筋が弱くなり発症します。
原因・症状
主な原因は、以下のようなものがあります。
■出産:骨盤内の臓器を支える筋肉や靭帯が大きく伸びて損傷する
■加齢:加齢による筋肉や組織の弾力性の低下
■腹圧の増加:長期間の重労働、慢性的な便秘、持続的な咳、肥満など
症状は個人によって異なりますが、一般的な症状には以下のものがあります。
■腟の不快感:違和感やピンポン玉のような物を触れる
■排尿の症状:急に尿意を感じたり残尿感、排尿しづらい感じ長時間歩いたり夕方になると症状が出やすくなります。脱出の程度がひどいと腎臓が腫れたりすることもあります。
検査
■内診:腟からの脱出の程度やどの臓器がでてきているのか等を診察します。
■超音波検査:腎臓の腫れがないかや残尿がないかをみます。
■チェーン膀胱造影:筋肉(骨盤筋群・括約筋)の状態、安静時および腹圧時の膀胱・尿道の位置関係を調べる検査です。尿道に金属の鎖(チェーン)をいれ、レントゲン撮影を行います。
■尿流動態検査:尿道にカテーテルを挿入し、膀胱機能や尿道機能を評価します。
治療
保存的治療:症状が軽度な場合や手術を避けたい場合に行います。
■適切な運動や体操、筋力強化運動を行うことによる骨盤底筋のトレーニング。
■重いものの持ち上げや長時間の立ち仕事を避ける。
■体重の管理や便秘の予防。
■リングペッサリーの使用:器具を腟内に挿入し脱出を防ぎます。数ヶ月おきに交換が必要となります。
手術(外科的)療法
■泌尿器科での治療
保存的治療で改善が見込めない場合やうまくいかないときは手術の適応となります。当科では腟壁形成術および会陰形成術、腟閉鎖術、TVM手術を行っています。脱出の状態や年齢、合併症などを考慮し、患者さんに最適と思われる術式を選択するようにしています。入院期間は1週間程度で保険適応です。
■婦人科での治療
子宮温存の希望のない方は、骨盤臓器脱の状態に応じて膣から子宮を摘出する腟式子宮全摘出術、腹腔鏡下に子宮を摘出し、腟断端を仙骨につり上げる術式を行っています。