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夜間頻尿

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概要

夜間頻尿は、「夜間に排尿のために1 回以上起きなければならないという愁訴である」と定義されていますが、夜間トイレに起きて困る症状のことをいいます。

夜間のトイレの回数は男女とも加齢とともに増加し、60歳を超えると8割の方が夜間1回以上トイレに起きることがわかっています。3回以上起きるようになるとかなり困るということで医療機関を受診される場合が多いようですが、70歳を超えると夜間3回以上トイレに起きる方は2割以上になります。

原因・症状

夜間頻尿の原因には大きく3つあります。

■夜間多尿:一番多いのが夜間の尿量が増加する問題です。これは日中起きて活動している間に下肢にたまった水分が、夜横になった時に尿になって出てくることによります。若い頃は下肢の筋肉のポンプ作用で上の方にある心臓まで血液を押し上げることができていたものが、加齢とともに筋肉量の低下や血管の老化によって機能が低下するためで、原因となる病気が無くても起こりますが、中には高血圧や心臓病、睡眠時無呼吸、糖尿病などが関係している場合や、利尿作用のある薬を内服している場合などもありますので注意が必要です。

■膀胱容量の低下:加齢にともなって膀胱にためられる量が減りますが、男性の場合は前立腺肥大症、女性の場合は骨盤臓器脱などが原因で尿が出にくくなることにより、残尿が増えたり、過活動膀胱になったりして頻尿となり、夜間の排尿回数も増えてしまいます。

■睡眠障害:睡眠も加齢の影響で浅く短くなる傾向があります。

■その他:夜間の尿量が多い方には抗利尿ホルモンの内服薬があり、有効性が高いですが男性にしか認可されておらず、低ナトリウム血症を起こす場合もあるので、医師による診察と注意深い処方が必要となります。

検査

■排尿記録:その方の夜間頻尿の原因を調べるための重要な記録になりますので、自分で排尿記録をつけてみましょう。排尿に関する病状を専門的に扱っている日本排尿機能学会が、排尿記録用紙をネット上に公開しておりますので、以下に示します。
これを記入して医療機関受診の際に提示されれば、1回分の受診が省略できます。

 排尿日誌(Bladder Diary)  頻度・尿量記録(Frequency Volume Chart)

また、他の疾患が原因となっている夜間頻尿でないかを調べるため、尿検査、血液検査、尿流動態検査、エコー検査などを行います。

治療

夜間頻尿の原因に応じた治療を行います。

夜間多尿が原因の場合

原因となる疾患がある場合はそちらの治療が優先しますが、該当しない場合は以下の対策を試みる価値があります。

  • 夕刻の下肢挙上:床に就く6時間前を目安に下肢を心臓より高い位置に30分程度挙上する。
  • 夕刻の散歩:下肢を動かすことで筋肉ポンプの作用で下肢の水分が心臓へと押し上げられる。
  • 特殊なストッキングの着用:日中下肢を圧迫できる特殊なストッキングを着用する。
  • 過剰な飲水を控える:一日に必要な水分量も参考にし、過剰な飲水は控える。
  • 夕食時以降の飲酒やカフェイン摂取を控える:アルコールや、コーヒーやお茶などに含まれるカフェインには利尿作用があります。
  • 寝る前の入浴:夕食前ではなく、寝る前に入浴する。

膀胱容量の低下

前立腺肥大症、骨盤臓器脱など原因となる疾患に対する治療が必要となります。

睡眠障害

寝つきが悪い方では睡眠導入剤が有効ですが、最近ではベンゾジアゼピン系の睡眠薬は夜間の転倒や認知機能低下の原因になる場合もあり、安易に使用しないよう注意喚起されています。先ずは薬に頼らず以下のような自分でできる対策を試みることが重要です。

  • 午前中明るい所で過ごす:メラトニン分泌をリセットされ、睡眠が促されます。
  • 日中できるだけ体を動かす:日中の適度な運動により睡眠が促進されます。
  • 夕食後のアルコールやカフェイン摂取を控える:アルコールや、コーヒーやお茶などに含まれるカフェインには利尿作用があります。また、アルコールやカフェインによって睡眠が妨げられます。
  • 寝る前の入浴:夕食前ではなく、寝る前に入浴する。

その他

1日に必要な水分摂取量

  1. 体重の約2% 50㎏の人なら1000ml
  2. 年齢を考慮した計算式もある
    22~55歳の場合:35ml/kg/日 50㎏の人なら1750ml
    55~65歳の場合:30ml/Kg/日 50㎏の人なら1500ml
    65歳以上の場合:25ml/Kg/日 50㎏の人なら1250ml

※上記には食事に含まれる水分量(600~800ml)も含まれるため、65歳以上の方の飲むべき水分量としては1000ml以下で良いことになり、2リットルも飲めば1リットル以上が過剰となり、尿として排出されることになる。これば3~4回分の尿量に相当する。

塩分量の基準

9.2g以上の塩分摂取は夜間頻尿の独立した危険因子とされている。
 ※ちなみにラーメン1杯に含まれる塩分は6~14gである。

夜間多尿指数の計算方法

排尿記録をつけて、夜間の尿量を1日尿量でわり算する。
高齢者では3分の1(若年者では5分の1)を上回っていれば夜間多尿である。