医療法人 原三信病院
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腎盂・尿管がん

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概要

腎盂・尿管がんは、腎臓の腎盂(じんう)と尿管の内部で発生するがんのことをいいます。腎臓は体内の老廃物を除去し、尿を生成する役割を果たしており、尿管は腎臓から尿を膀胱へ運ぶ役割を持っています。腎盂・尿管がんは比較的まれながんであり、一般的には腎盂や尿管の内側を覆う尿路上皮細胞が異常な増殖を起こし、腫瘍を形成することによって発症します。

原因・症状

正確な原因はわかっていませんが、以下の要因が関与している可能性があります。

■喫煙:喫煙は腎がんのリスクを増加させる要因とされています。
■長期間の腎臓結石:腎臓結石が長期間存在すると、がんのリスクが高まることがあります。
■遺伝的要因:腎盂・尿管がんは遺伝的な要因によっても引き起こされる場合があります。

腎盂・尿管がんの初期段階では、通常は症状が現れません。腎盂・尿管がんはしばしば無症状であり、偶然発見されることもあります。腎盂・尿管がんが進行すると、以下の症状が現れる可能性があります。

■血尿:腎盂・尿管がんの初期症状として、尿中に血液が混じることがあります。尿がピンク色や赤色を呈する場合、注意が必要です。
■腰痛:腎臓の周辺に痛みや圧迫感を感じることがあります。特に片側の腰に痛みがある場合は、尿路結石のほか腎盂・尿管がんの可能性も考えられます。
■体重減少や食欲不振:がんが進行すると、体重減少や食欲不振などの一般的ながんの症状が現れることがあります。

検査

■血液検査:腎盂尿管がんに対する血液中のマーカーは存在しません。一般的に全身状態の把握や腎機能を調べるために、ヘモグロビンや白血球数、血小板のほかに血液中のクレアチニンのレベルなどが調べられます。
尿検査:尿中に赤血球や尿路上皮細胞がないかなどを調べるために尿検査が行われます。また、尿中のがん細胞の有無を調べます。
■膀胱内視鏡検査(膀胱鏡検査):腎盂尿管がんの一部は膀胱がんも合併しています。また、膀胱に近い尿管では膀胱と尿管をつなぐ孔、つまり尿管口から尿管がんを観察することもあります。膀胱内に細い管を挿入して、膀胱の内部を観察し、腫瘍の有無をを確認するために行われます。
■超音波検査:腎臓の形状や腫瘤の有無を確認するために超音波検査が行われます。これは非侵襲的な検査であり、腎盂や尿管の腫れがないかを調べます。また、腎臓に近い腎盂や尿管の腫瘍を指摘することもあります。
■CT(コンピュータ断層撮影): CTで腎盂や尿管といった腫瘍の特定やリンパ節の腫れ、肺や肝臓、骨への転移などを調べます。造影剤を用いると、造影剤が尿管へと排泄されるため、腎盂や尿管のどの位置に腫瘍があるのか、また、腫瘍が尿の通過をどの程度遮断しているのかなどを判断することができます。CT検査はX線による被ばくをともないます。
■MRI(核磁気共鳴画像法): MRIにより造影剤を使えないような場合でもがんがあるのかを特定するのに優れています。CT検査のような被ばくの危険性はありません。

治療

■まずは手術室で麻酔下に、尿道から内視鏡を挿入し尿管内にある腫瘍の組織採取を行い、がんの組織決定を行います。そのほとんどは尿の通り道の内側にある尿路上皮細胞ががん化したものです。尿管が細く尿管鏡検査を行えない場合は、尿管内の腫瘍細胞の有無を確認し、造影剤を注入し尿管や腎盂にがんの影がないかどうかなどを間接的に調べ、他の画像検査と併せて尿管がんの診断を行うこともあります。
■腎盂尿管がんの組織が確定すると、尿路上皮がんの場合腎盂あるいは尿管の複数個所にがんが起こることがあり、また術後に腎盂尿管がんが再発すると再度の手術は周囲の組織と強固に癒着をするためがんの摘除が困難なうえに他臓器の損傷やがんを取り残してしまう場合があります。尿管の代わりとなる人工的な物質は現在実用化されておらず、このような人工物を尿路に挿入すると石灰化や狭窄などが起こりなお困難な状況が生じると思われます。このため、腎盂尿管がんの場合、がんが生じた腎盂尿管を腎臓や周囲脂肪を含めて膀胱と尿管の接合部である尿管口まで一塊にして摘出する方法が、一般的です。最近では膀胱がん同様に術前に尿路上皮がんに対し対して有効な抗がん剤を術前に投与して、手術に臨む場合も増えてきています。
手術の方法は内視鏡的を用いて腎臓と尿管を摘除する方法が一般的で、da Vinciがある施設ではロボットを用いて摘除することもあります。
■一般的な方法ではありませんが、尿管内のごく一部にしか生じていない小さな腫瘍で、組織採取した段階で取り切れている可能性が高いと考えられる場合は、腫瘍周囲組織をレーザーで焼灼したりする方法を併用して治療することもあります。ただこの場合、手術の限界を十分理解された上に数か月おきに行う麻酔下での尿管鏡検査を行う必要があります。
​■すでに他臓器転移やリンパ節転移がある場合や腎盂尿管がんが尿路外に浸潤し周囲血管や臓器に浸潤している場合は、組織確定後に尿路上皮がんの場合、抗がん剤治療から開始することがあります。抗がん剤治療が有効でない場合は、免疫チェックポイント阻害剤と呼ばれる免疫の作用を用いた治療法なども検討します。さらに抗がん剤を直接細胞に運び込むような薬剤も開発され使用されています。全身状態や腎機能のほかに本人の希望も相談しながら治療を検討してゆきます。状況によっては症状緩和を中心とした緩和医療を行うことも検討します。