卵巣嚢腫
概要
卵巣嚢腫の主な種類
■しょう液性嚢腫:卵巣から分泌されたサラサラした水のような液体が溜まって袋状になる嚢腫で、ほとんどが良性です。年齢に関わらず発症します。中には悪性のものもあるため注意が必要です。
■粘液性嚢腫:黄色や淡白色のドロっとした粘液が溜まって袋状になる嚢腫で多くは良性です。年齢に関わらず発症します。しかし、がんの場合もあるので注意が必要です。
■皮様嚢腫:生殖細胞が分裂した際に成熟途中のものが混入することで、脂肪・歯・毛髪・骨などの組織が混じり合った物が内部にできてしまう嚢腫です。多くは良性ですが、一部が悪性化することもあり注意が必要です。嚢腫が大きくなると下腹部痛など様々な症状が現われ、緊急手術が必要となることもあります。主に若い女性に発症しやすく、両側の卵巣に発生することもあります。
■チョコレート嚢胞:子宮内膜症が卵巣内に発生した嚢腫のことで、古くなった血液が溜まって変色するとチョコレート色に見えることがあり、チョコレート嚢胞と呼ばれています。女性ホルモンのエストロゲンに関係して起こる疾患のため、初経~閉経までの生殖可能な女性に発症するとされ、不妊症の原因にもなります。嚢胞が大きくなると腹痛や下腹痛などの症状が現れ、40歳以上で4cm以上のものは卵巣がんに変化する可能性が上がるため注意が必要です。また、嚢胞が破裂することもあり、急激な痛みから緊急手術が必要になることもあります。
原因・症状
原因はまだはっきりと解明されていません。
症状は初期段階では無症状の場合が多く、他の症状などで婦人科を受診した際に発見されることが多いです。嚢腫が大きくなってくると下腹部の違和感や触るとしこりのように感じたり、軽い下腹部痛が現れたりします。さらに大きくなり、嚢腫が破裂したりねじれたり(捻転)すると激しい下腹部痛が現れることがあります。血流が途絶え、短時間で卵巣が壊死するので注意が必要です。また、チョコレート嚢腫では、激しい月経痛や腰痛、不妊症が現れることがあります。チョコレート嚢腫が破裂すると、骨盤内で腹膜炎を起こしやすいため、入院および手術が必要となることがあります。
検査
医師による内診や超音波検査、MRI検査、CT検査などが行われます。
■内診:医師が腟から診察してお腹の中の状態を確認します。
■超音波検査:超音波を当てて骨盤内の画像を映し出し嚢腫の有無を確認します。嚢腫が確認された場合は、その大きさや充実性部位の有無を確認します。
■MRI検査:超音波検査で異常があった際に詳しく調べます。
■CT検査:超音波検査で異常があった際に詳しく調べます。
治療
治療方法は、主に手術による摘出が行われます。嚢胞が小さい場合は経過観察として、外来で卵巣腫瘍の大きさを定期的に検査していくこともあります。また、チョコレート嚢胞の場合は薬物療法(ホルモン療法)を用いることもあります。
■薬物療法(ホルモン療法)※チョコレート嚢胞の場合:チョコレート嚢胞の場合、嚢胞が小さい場合はお薬の服薬で腫瘍の縮小を図ることもあります。
■付属器摘出術:卵巣腫瘍、卵管をすべて摘出します。入院期間は約1週間す。再発とがん化の危険性が減少します。
■卵巣腫瘍摘出術:入院期間は約1週間です。卵巣の悪い部分だけを摘出し、卵巣の正常な部分は残します。将来、妊娠が可能です。