過活動膀胱
概要
過活動膀胱は、急にトイレに行きたくなり我慢することが難しい(尿意切迫感)、我慢ができずに尿がもれてしまう(切迫性尿失禁)、日中や夜間に何度もトイレに行く(頻尿)症状が現れる病気です。
日本排尿機能学会によると、日本では40歳以上の12%、7-8人に1人に過活動膀胱症状があると言われ、1000万人以上の患者さんがいると推定されています。
原因・症状
原因としては脳梗塞などの脳血管疾患、脊髄や末梢神経障害、前立腺肥大症や骨盤底筋の脆弱化、加齢などが原因と考えられています。高血圧や高脂血症、糖尿病など生活習慣病の因子が多いほど過活動膀胱の頻度や程度が高いと報告されています。
症状としてはおよそ日中8回以上の排尿、夜間1回以上の排尿、我慢しにくい急な尿意、トイレまで間に合わず尿がもれてしまう、などが代表です。症状が悪化すると「外出先ではまずトイレの場所を探してしまう」「自宅でトイレをすませてスーパーに行っても買い物の途中でトイレに行ってしまう」「旅行はトイレが心配で行けない、公共交通機関に乗りにくい」など生活に支障をきたすようになります。
検査
■問診:詳しい症状の問診や「過活動膀胱症状スコア」を使って過活動膀胱と診断します。
■検尿:尿を調べることで感染の兆候や血尿、尿糖、蛋白尿などがないか確認します。
■超音波検査:尿を作る臓器である腎臓や、膀胱の中に他に病気が隠れていないか確認します。
■尿流測定:機器がついたトイレに排尿をすることで、膀胱容量や排尿パターンを観察します。
■残尿測定:排尿後に膀胱内にどのくらい尿が残っているのかエコーで量を測ります。
■排尿記録:24時間(起床時から翌日の起床時まで)の排尿量と時間を記録します。膀胱に溜めることができる量や尿回数、総尿量から水分摂取の量が適切かなど多くのことがわかります。
治療
■行動療法:適正な水分や塩分摂取、バランスのとれた食生活、運動、便秘の改善、アルコールやカフェインを含む飲料の制限、骨盤底筋体操、ダイエット、膀胱訓練などは効果が認められています。
■薬物療法:膀胱の異常な収縮を抑える抗コリン薬が代表ですが、副作用として便秘や口喝、目の霞み、認知機能の低下など起こる可能性があり、高齢の方には注意を要する場合があります。そこで、抗コリン薬とは異なり膀胱の弛緩を促進することで症状を緩和するβアドレナリン受容体作動薬が開発され薬物治療の主体になりつつあります。他には、電気や磁気を使用した刺激療法を行うことがあります。より重症の方には、2020年に保険適応になったボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法や、2017年保険適応となった仙骨神経刺激療法(SNS)なども行うことがあります。
*過活動膀胱は、患者さんのそれぞれの状況や症状の程度によって最適な治療を見つけることが大切です。お困りの方はぜひご相談にお見えになってください。