医療法人 原三信病院
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虫垂炎

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概要

盲腸(もうちょう)と呼ばれることが多いですが、正確には急性虫垂炎と言います。虫垂は、大腸の一部で、大腸の始まりの部わから突出し盲端となり、右下腹部に存在します。

原因・症状

急性虫垂炎は、虫垂の内部で細菌が増殖し、炎症が生じて発症します。小児から大人まで発病する可能性があります。

■右下腹部の痛み:腹痛は最初は軽度でも、時間が経つにつれて徐々に強くなります。
■発熱、悪寒、寒気:体温が上昇することがあります。
■吐き気、嘔吐:腹痛とともに吐き気が出ることがあります。
■食欲不振:腹痛や吐き気のため、食欲が減退することがあります。
■腹部膨満感:虫垂炎によって腸管運動が低下するため、腹部にガスがたまり膨満感を覚えることがあります。

検査

■身体診察:痛みの場所や痛みの程度、腹部の腫れや硬さなどを調べます。
■血液検査:炎症反応を示す白血球数が上昇することがあります。
■超音波検査:腹部の内部を超音波で観察し、虫垂の炎症や腫れ、膿の溜まり具合などを確認します。
■CT検査:腹部の内部をX線で撮影し、虫垂の腫れや炎症の状態を詳しく調べます。

治療

発症後間もなく、炎症が軽度の場合は、抗生剤治療が効果できますが、炎症が高度の場合は、手術を迅速に行う必要があります。手術をためらうと虫垂が破れて腹膜炎が増悪する可能性があります。手術には以下の方法があります。

■腹腔鏡下虫垂切除術:全身麻酔下に行います。通常の開腹手術に比べると、傷が小さいため、美容上のメリットが大きく、術後回復が早いのが特徴です。臍部や下腹部に3カ所程の小切開(1~2cm)を加えて、専用のポートを挿入し、腹腔内に炭酸ガスを送り込んだ後、腹腔鏡で観察しながら、専用の鉗子類を用いて虫垂を切除します。所用時間は40-80分程度です。
■単孔式腹腔鏡下虫垂切除術:腹腔鏡手術の美容的なメリットをさらに高めるため、傷を臍部の1カ所にして行う手術法です。炎症が比較的軽度の場合、適応されます。手術時間は60~90分程度です。
■開腹虫垂切除術:高度の腹膜炎をともなう重症の虫垂炎の場合に適応されます。手術時間は50-90分程度です。

その他

【入院期間について】

比較的軽度の虫垂炎の場合は、術後数日以内に退院が可能です。重症の場合、1週間以上かかることがあります。

【手術にともなう合併症】

虫垂炎の手術後は、以下の様な合併症を生じる可能性があります。

■術中合併症
(ア)出血(輸血を必要とするような出血はほとんどありません)
(イ)他臓器の損傷(腸管・膀胱・子宮・卵巣・卵管・尿管など) きわめて稀な合併症です。損傷は可及的に修復します。
■術後合併症
(ア)創感染
(イ)遺残膿瘍
急性虫垂炎は細菌の増殖が原因となっているため、比較的高頻度に起こります。術後5-14日ころに起こりやすく、とくに穿孔をともなう虫垂炎の術後には起こりやすい合併症です。これらの感染症を合併すると、治療に時間を要するため、入院期間が長期することがあります。通常抗菌薬の使用により治すことができますが、治療が難渋する場合には再手術が必要となることがあります。
(ウ)糞瘻形成
虫垂断端から便が漏出し、創部との間に交通ができる状態をいいます。非常にまれな合併症です。長期絶食が必要となります。
(エ)術後、腸同士あるは腸と創部が癒着することなどにより起こる合併症です。絶食と消化管の減圧が必要となり、重症例では手術が必要となります。
■その他の予期せぬ合併症
手術に際し、予期せぬ稀な偶発症が起こる可能性は皆無ではありません。とくに、腹腔鏡下手術では、立体的な視認が難しいこと、鉗子を用いた間接的な操作が主であることから、予期せぬ偶発症が起こりえます。これらの偶発症が発症した際は、迅速に最善の治療を行うとともに、病状についてご本人・ご家族に十分な説明を行います。