ヘリコバクター・ピロリ感染症
概要
ヘリコバクター・ピロリは、胃の粘膜に寄生する細菌です。感染すると、慢性的な胃炎、消化性潰瘍、胃がんなどの疾患を引き起こす可能性があります。
原因・症状
ヘリコバクター・ピロリ感染症の症状には、胃痛、腹痛、吐き気、嘔吐、食欲不振、体重減少、胃炎などがあります。これらの症状は、感染した個人によって異なる場合があります。ヘリコバクター・ピロリ感染症は、口から摂取された食物や水を介して感染します。感染予防には、適切な食品の調理、清潔な水の消費、適切な衛生措置が必要です。
検査
呼気検査:専用の装置を使って、患者が吸い込んだ空気中の一酸化炭素濃度の変化を測定する方法。
血液検査:ヘリコバクター・ピロリ感染による免疫反応を調べる方法。
便検査:排便物中のヘリコバクター・ピロリ菌を調べる方法。
(保険診療上、これらの検査を行うためには上部消化管内視鏡検査が行われている必要があります)
内視鏡検査:胃や十二指腸の内部を観察し、組織を採取して検査する方法。
上部消化管内視鏡検査で萎縮性胃炎というピロリ菌感染によると考えられる慢性胃炎を認めた時、ピロリ菌の感染診断を保険で行う事ができます。ピロリ菌の感染診断には
①尿素呼気試験(お薬を飲む前後で紙袋に息を吹き込む検査です)
②血清抗体測定
③迅速ウレアーゼ試験
④鏡検法
⑤培養法
⑥便中抗原測定 などがあります。
いずれかが陽性であれば、除菌治療を行う事ができます。内視鏡検査でピロリ菌感染が疑われるのに、感染診断で陰性の場合、別の検査法でもう一回検査することができます。
治療
ピロリ菌の除菌治療は胃酸分泌を抑えるお薬と2種類の抗菌薬の組み合わせです。最初に行う一次除菌、一次除菌が成功しなかった時に行う二次除菌があり、それぞれ保険診療で以下の様にレジメンが決められています。
一次除菌
・ボノプラザンまたはプロトンポンプ阻害薬
・アモキシシリン 1500mg/日
・クラリスロマイシン 400mg/日または800mg/日
一週間内服
二次除菌
・ボノプラザンまたはプロトンポンプ阻害薬
・アモキシシリン 1500mg/日
・メトロニダゾール 500mg/日
一週間内服
ピロリ菌除菌のためには胃酸分泌を十分に抑制しピロリ菌を活動期に入らせて抗菌薬が効きやすい状態にすることが重要です。当院では胃酸分泌抑制に優れて除菌率の高いボノプラザンを用いたレジメンを基本的に使っており、期待される除菌率は一次除菌で約90%、二次除菌で約95%と予想されます。
その他
2013年2月にヘリコバクター・ピロリ感染胃炎に対するピロリ菌除菌治療が保険適応に追加されました。現在の除菌治療の保険適応は
➀胃十二指腸潰瘍
②胃MALTリンパ腫
➂特発性血小板減少性紫斑病
④早期胃がんに対する内視鏡的治療後
⑤ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎
ピロリ菌に感染していますと胃癌を含めた上記の病気の原因となりえることがわかっています。ピロリ菌除菌治療により将来の胃がん発生リスクが下がる事が期待されます。