尿路結石

　尿路結石は、腎盂や尿管、膀胱、尿道（尿路）で形成される硬い結晶の塊です。腎盂にできるものを「腎結石」、尿管にできるものを「尿管結石」、膀胱にできるものを「膀胱結石」といいます。尿路結石の約9割は上部尿路にできる腎結石や尿管結石です。結石を取り除いても約半数の方が再発すると報告されており、再発率が高い疾患です。

尿路結石の形成原因は多岐にわたりますが、以下のような要因が関与するといわれています。
■濃縮尿：尿中の水分が不足して尿が濃縮されると、結晶が形成されやすくなります。
■高濃度のミネラル：尿中に多くのカルシウム、尿酸、リン酸塩が含まれると、結晶の形成が促進されます。
■尿路の異常：狭窄、異物の存在など尿路の構造的な問題が結石形成のリスクを高めることがあります。
■食事：塩分、たんぱく質、の摂り過ぎは結石生成のリスクを増加させる可能性があります。

尿路結石の症状は結石の位置や大きさによって異なりますが、一般的な症状には以下があります。症状がないこともあります。
■背部、腰部や腹部の激しい痛み：尿管結石によって尿の流れが悪くなり尿が腎臓や尿管に貯留して拡張する（水腎症）と激しい痛みを生じることがあります。痛みは腹部、下腹部、陰部に広がることがあります（放散痛）。
■吐き気や嘔吐：尿路結石が強い痛みを引き起こすことで、吐き気や嘔吐が生じることがあります。
■頻尿や排尿痛：尿管結石が膀胱近くまで移動したり、膀胱結石があると排尿回数が多くなったり、排尿時に痛みを感じることがあります。
■肉眼的血尿：尿中に血液が混じり、尿が赤くなることがあります。
■尿の異常：尿路に感染が合併すると尿の濁りや異臭がある場合があります。

■血液検査：尿素窒素、クレアチニン、尿酸、カルシウム、リンなどの数値を測定し、腎機能に異常がないかを調べます。
■尿検査：尿中の赤血球、白血球、結晶、細菌などに異常があるかを調べます。
■​レントゲン検査：結石の位置と大きさを確認するためにおこないます。結石による通過障害の程度を評価するために造影剤を使用することもあります。
■超音波検査：腎盂や尿管の拡張の程度、腎臓の形態を評価します。
■CT検査：尿路結石の位置と大きさを評価します。

手術療法

尿路結石は、腎臓や尿管の上部尿路、膀胱や尿道の下部尿路で治療方針が異なります。

《上部尿路結石》
■体外衝撃波結石破砕術（ESWL）：外部から発生する衝撃波を結石をにぶつけて結石を細かく破砕し、自然に排出しやすくする手術です。X線や超音波のガイドで結石に衝撃波の焦点を合わせて照射します。1回の手術で結石に１秒に１回、3000回ほど繰り返して衝撃波をあてます。麻酔なしで治療でき、体への負担が軽いとされています。
■経尿道的尿路結石砕石術（TUL）：尿道から細い内視鏡を挿入し、結石をレーザーなどで破砕、除去する方法です。現在の上部尿路結石治療の主流である治療法です。
■経皮的腎尿管砕石術(PNL)：腎臓に1cm弱の細い筒管を挿入して手術を行ないます。細い筒から内視鏡や結石を破砕する器具を入れて結石を除去します。ESWLやTULで治療が難しい、大きな上部尿路結石やサンゴ状結石の治療に適しています。
■尿管ステントの挿入：尿管が結石によって閉塞し腎機能の悪化や感染症（腎盂腎炎）を発症している場合は、尿管ステントと呼ばれる細いチューブを尿管内に挿入することがあります。尿管ステントによって尿の流れが確保され、水腎症などの症状を改善することができなす。

《下部尿路結石》
■経尿道的膀胱尿道結石砕石術、経尿道的膀胱尿道異物除去：尿道から内視鏡を挿入し膀胱または尿道の結石を砕いて除去します。
■膀胱切石術；膀胱結石が非常に大きい場合に下腹部、膀胱を切開して結石を摘出することがあります。

《再発予防》
尿路結石は再発率が高いため、以下のような再発予防策を心がけることも重要です。
■水分の多量摂取：心臓や腎臓に問題がない場合は1日2リットル以上の水を飲んで尿を薄くすることが重要です。
■食生活の改善：結石に最も関与しているシュウ酸を多く含む食品（ほうれん草、紅茶、コーヒー、緑茶、チョコレートなど）の過剰摂取を控えます。また、シュウ酸を含むものを食べる時はカルシウムと一緒に取ることでシュウ酸の吸収が抑えられます。その他の再発予防策としては塩分・糖分・動物性の脂肪やタンパク質・プリン体が多く含まれる食品の過剰摂取を控える、寝る前の食事を控えるなどが上げられます。
■適度な運動：肥満と尿路結石の因果関係ははっきりとわかっていませんが、肥満は尿路結石のリスク要因と考えられているため、適度な運動によって肥満を防止、改善することも大切です。また、小さい結石は運動によって排出されやすくなるともいわれています。