医療法人 原三信病院
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大腸がん

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概要

わが国において、大腸(結腸および直腸)がんは、男女とも罹患・死亡率が増加の一途をたどっており、その撲滅が国家的課題といえます。早期大腸がんに対する内視鏡的治療が普及し、また、化学療法も分子標的薬が加わることで発展を遂げ、大腸がんの治療成績は、以前よりかなり向上しています。しかし、がん行大腸がんの治療成績は依然として不良であり、様々な治療法を組み合わせる集学的治療の発展がん、ますます期待されます。

原因・症状

大腸がんは、食生活の欧米化にともなう便秘の習慣化やがん遺伝子の関与などが示唆されていますが、検診や内視鏡技術の発展による早期大腸がんの発見率の向上も関係しています。

■変便・便秘・下痢:便の形状、頻度、量、色が通常と異なる場合があります。大腸がんが進行すると、便が細くなったり、形状が変化したり、出る量が減ったりすることがあります。
■腹部不快感・腹痛:腹部が張ったような感じや痛みがあることがあります。大腸がんが進行すると、腹痛が増すようになることがあります。
■腸閉塞:腫瘍が大きくなると、腸が狭くなって腸閉塞を起こすことがあります。腸閉塞は、腹痛、吐き気、嘔吐、腹部膨満感、便秘などを引き起こします。
■貧血:腫瘍からの出血がある場合、貧血を引き起こすことがあります。貧血は、倦怠感、息切れ、めまい、頭痛、動悸、手足の冷えなどの症状を引き起こすことがあります。
■食欲不振・体重減少:大腸がんが進行すると、食欲不振が起こることがあります。また、体重が減少することがあります。

これらの症状がある場合は、早期に医師の診察を受けることをおすすめします。ただし、これらの症状があるからといって必ずしも大腸がんであるとは限りません。

検査

便潜血検査:大腸がんの早期発見に有効な検査で、簡単に行うことができます。便に含まれる血液がん出するため、がんの進行具合によっては陽性反応が出る場合もあります。

■大腸内視鏡検査:内視鏡を使って直腸から大腸までの内部を観察し、がんやポリープなど異常を見つける検査です。麻酔下で行われ、リスクはあるものの、がんを早期発見するために非がん有効な検査です。
■注腸造影検査:バリウムという薬剤を飲んでからレントゲンを撮影することで、腸管の形態を観察する検査です。内視鏡検査に比べリスクは少ないものの、がんを見つける精度は低くなります。
■CT検査:腹部全体をレントゲンで撮影することで、大腸がんの転移や周辺組織の状態を評価することができます。内視鏡検査と併用することで、より詳細な診断ができます。
■RI検査:核磁気共鳴を利用して内部を撮影することで、腫瘍の詳細な情報を得ることができます。主に内視鏡検査とCT検査と併用して、がんの診断や評価に使用されます。

どの検査方法を選ぶかは、患者さんの状態や症状、医師の判断によって異なります。

治療

最新の「大腸がん治療ガイドライン 2016年版」に準拠し、患者さん一人一人に応じた最適な治療の選択を心がけています。

内科的手術

■内視鏡的粘膜剥離(EMR)、粘膜剥離 (ESD):ごく早期の粘膜内に限局したがんに対しては、内視鏡的切除の適応が検討されます。最も低侵襲で、体の負担が軽い治療です。治療は、主に消化管内科が担当します。

外科的手術

内視鏡的治療が適応できない大腸がんに対しては、手術が考慮されます。大腸がんの進行度に応じて、腹腔鏡がん術または開腹手術が選択されます。

■腹腔鏡下大腸切除術:手術創は腹部に5-6カ所ずつで、いずれも1-2cmと小さいので、比較的低侵襲で、術後疼痛が少なく、迅速な回復が期待できます。大腸を、周囲リンパ節を含めて切除した後、吻合により再建します。腹腔鏡手術は術中出血や高度な癒着、周囲臓器に浸潤したがんなどには対処が困難なことがあり、その場合には、安全を最優先して開腹術に移行することがあります。
■ロボット支援結腸がん手術:2022年より、直腸がんを除く大腸がんの手術に、ロボットを用いた腹腔鏡手術を導入しました。自由度の高いロボットアームを用いることにより、より精密な手術が可能となりました。最新の手術になりますが、安全には十分に配慮して施行しています。
■開腹大腸切除術:進行がんなどに対しては、開腹大腸切除、再建術が施行されます。膀胱がん子宮などの他臓器浸潤をともなう大腸がんに対しては、専門科と連携して、拡大切除を行います。

人工肛門について
人工肛門とは、小腸または大腸の一部を腹壁から体外へ引き出して、皮膚と固定させ、術後に排便ができるようにしたものです。肛門に近接した下部直腸がんや肛門管がんに対しては、直腸肛門切除にともなう永久的な人工肛門造設が必要なことがあります。これに対して、治療上の様々な目的で、人工肛門を期間限定で造設することもあり、通常は、数ヵ月〜1年程後に、人工肛門閉鎖術を行って、元の肛門から排便できるようにします。人工肛門には、パウチと言う袋を装着して排便の自己管理を行います。排便習慣が変わりますので、入院中に、専門看護師の指導による充分な練習が必要です。

薬物的治療

■化学療法:術後のがん再発を予防するため、約半年の抗癌剤内服や点滴による化学療法が必要になることがあります。また、手術適応のない進行がんやがん再発の治療のためにも施行されます。使う薬がんは、5FU系薬剤やイリノテカン, オキサリプラチン、分子標的薬(ベバシヅマブ、パニツズマブ、ラムシルマブ)などです。

その他

入院期間について

手術後は、1-2週間の入院治療が必要です。

手術にともなう合併症

■術中合併症
■出血
■多臓器損傷
■術後合併症
■術後出血
■縫合不全
■吻合部狭窄
■創感染症
■腹腔内膿瘍
■その他の予期せぬ合併症

手術に際し、予期せぬ稀な偶発症が起こる可能性は皆無ではありません。とくに、腹腔鏡下手術では、立体的な視認が難しいこと、鉗子を用いた間接的な操作が主であることから、予期せぬ偶発症が起こりえます。これらの偶発症が発症した際は、迅速に最善の治療を行うとともに、病状についてご本人・ご家族に十分な説明を行います